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執筆: 副業タックス編集部
スーパーのレジを通り終えて、レシートを眺めながら手が止まる――「この鶏もも肉と春の野菜は、来週の料理教室の試作用?それとも今夜の家族の夕飯?」。料理を副業にしている会社員の確定申告で、最初に必ずつまずくのがこの食材費の経費判定です。同じ買い物に事業用と私用が混ざるのが当たり前なのが、料理副業の難しさ。本記事では、料理教室の主宰、レシピ販売・電子書籍、ケータリング・出張料理、料理YouTube/Instagramをしている方向けに、食材費・キッチンの場所代・調理器具の経費の考え方を整理します。
料理副業の所得区分をまず決める
経費の話に入る前に、その料理副業が事業所得なのか雑所得なのかを決めておきます。区分によって青色申告ができるか、赤字を給与と相殺できるかが変わるためです。
判定の目安はシンプルで、毎月のように開く料理教室や、継続的に売上のあるレシピ販売・ケータリングのように継続性・反復性があり、相応の時間と労力をかけているなら事業所得が視野に入ります。一方、年に数回の単発レシピ寄稿や、たまたまイベントで出張料理を頼まれた程度なら雑所得寄りです。具体的な線引きは事業所得と雑所得の判定で詳しく解説しています。どちらでも「収入−必要経費=所得」で計算する点は同じなので、まずは経費をきちんと拾うことが先決です。
最難関:食材費はどこまで経費になる
料理副業で一番判断に迷うのが食材費です。原則はこうです。
- 経費になる:レシピ開発の試作、撮影で使った料理、教室で参加者に提供した分、ケータリングで納品した分の食材
- 経費にならない:家族の食事に回した分、自分が普段食べるための食材
問題は、これらが一枚のスーパーのレシートに混在すること。後から「どれが試作用だったか」を思い出すのは不可能に近いので、購入したその場で記録するのが唯一の現実解です。レシートの余白に、品目ごとに「試作」「教室○月分」「私用」と書き込み、事業用の品目に丸を付けておきます。レシピ開発でうまくいかなかった試作分(いわゆるフードコスト)も、何を作ろうとして失敗したかのメモがあれば立派な経費です。
撮影した料理を家族が食べた場合は「撮影が主目的なら経費、撮影は名目で実態は夕飯なら家事費」と考えます。迷ったら撮影日・投稿先を記録しておけば説明がつきます。
キッチンの場所代をどう扱うか
調理する場所のコストも経費にできますが、自宅かレンタルかで扱いが分かれます。生活と事業が混ざる支出は家事関連費と呼ばれ、所得税法施行令第96条により「業務上直接必要で、その部分を明らかに区分できる」分だけが経費です。
| 場所・費目 | 経費にできる範囲 | 按分の根拠 |
|---|---|---|
| 自宅キッチンで教室・撮影 | 床面積比 または 使用時間比で按分 | 間取り図・撮影/開催日の記録 |
| レンタルキッチン・レンタルスペース | 事業利用なら全額経費 | 予約明細・領収書 |
| 自宅の電気・ガス・水道 | キッチン按分率で一部を経費 | 床面積比 × 稼働日数の割合 |
自宅キッチンの場合、家全体の床面積に対するキッチンの割合や、月の稼働時間の割合を根拠にします。たとえば月の調理時間のうち事業利用が3割なら、ガス代の3割が目安。按分の細かい考え方は按分と領収書メモのコツも参考になります。
調理器具・撮影機材は金額で処理が変わる
スタンドミキサーや業務用オーブン、撮影用のカメラ・照明などを買うとき、価格帯によって税務上の処理が変わります。
| 取得価額 | 処理方法 |
|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費・備品として買った年に全額経費 |
| 10万円以上30万円未満 | 青色申告者なら少額減価償却資産の特例で一括経費化(年間合計300万円まで/白色は対象外) |
| 30万円以上 | 原則、耐用年数に応じて減価償却(タックスアンサーNo.2100) |
小型のハンドミキサーや調理用バットは多くが10万円未満で一括経費。一方、業務用のコンベクションオーブンや本格的な撮影用カメラ・リングライト・三脚一式は10万円を超えることもあり、青色申告なら特例で一気に落とせます。30万円以上になりやすい高額機材を買う予定があるなら、先に開業届と青色申告の準備を済ませておくと有利です。なお事業使用率が100%でない器具は「金額 × 事業使用割合」が経費になります。
料理教室・ケータリングならではの経費
食材費や機材以外にも、料理副業に特有の経費があります。拾い忘れやすいものを挙げます。
- 使い捨て容器・包材:ケータリングや菓子販売の容器、ラッピング材
- 配布資料の印刷費:教室のレシピプリント、参加者へのテキスト
- 出張時の交通費:出張料理やケータリングの移動、食材の買い出し
- レンタル食器・備品:教室やイベントで借りる皿・カトラリー
- 損害賠償保険:食中毒や物損に備えるイベント保険・PL保険の保険料
- 講習費用:食品衛生責任者の資格講習費、料理関連のセミナー受講料
これらは事業のために支出したと説明できれば経費です。領収書に「○月教室分」「△△様ケータリング」と紐付けメモを残しておきましょう。
「営業許可」と「確定申告」は別物
ケータリングや菓子の製造・販売をする場合、保健所の営業許可や食品衛生責任者の設置が必要なケースがあります。ここで誤解しやすいのが「許可を取っていないから申告しなくていい」という考え方です。
営業許可は食品衛生法にもとづく制度で、衛生面の安全を確保するためのもの。一方、確定申告は所得税法の制度で、所得が出たら申告するという話です。両者はまったく別の制度なので、営業許可の有無にかかわらず、所得が一定額を超えれば確定申告は必要です。許可が必要な業態で無許可営業をしているなら、それは食品衛生法上の問題として別途解消すべきで、税務申告を省略する理由にはなりません。許可と申告は切り離して考えてください。
食材費の記帳は会計ソフトに任せる
品目ごとの事業/私用の振り分け、按分割合の入力、減価償却の自動計算まで会計ソフトに任せれば、レシートの山に追われずに済みます。無料プランから試せる2社をまとめました。
会計ソフト
freee会計
質問に答えるだけで申告書が完成
会計ソフト
マネーフォワード クラウド確定申告
自動仕訳で会計業務を効率化
まとめ
- 料理副業はまず事業所得か雑所得かを判定。継続的な教室・販売なら事業所得が視野。
- 食材費は試作・撮影・教室提供・納品分が経費、家族の食事は家事費。購入時に品目ごとにメモする。
- キッチンは自宅なら床面積比・時間比で按分、レンタルなら事業利用分は全額経費。
- 調理器具・撮影機材は10万円未満は一括、10〜30万円は青色なら特例、30万円以上は減価償却。
- 容器・包材、配布資料、交通費、保険料、講習費なども料理副業の経費。
- 営業許可(食品衛生法)と確定申告(所得税法)は別制度。許可がなくても所得があれば申告は必要。
「どれが試作用だったか」は後から思い出せません。今日のレシートから、品目ごとのメモを始めてみてください。料理副業の経費の具体例は料理副業の経費ガイドでも掘り下げています。
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